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hirobenaoko BLOG
by nh6610002
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Nara Leao 「Dez Anos Depois」
ナラ・レオン
(1942-1989)
Nara Leao 「Dez Anos Depois」_c0060479_15435089.jpg






邦題「美しきボサノヴァのミューズ」の名の通り、本当に美しいアルバム。
ブラジル音楽のボサ・ノヴァ。このなんとも美しくて切ないメロディーとこのリズムは、何故、日本人の私にもこんなに自然にしみ込んでくるんだろう。
それはもう、考え込んでしまうほどに。

このアルバムを買った頃、ボサノヴァって、なんだか気持ちのいいアノ音楽よね、ぐらいにしか思っていなかった。ギターのY氏に教えてもらった。
「ナラ・レオンって聞いてみたら?いいよ。」
さっそく、CD屋へ。
これまた、ブラジル音楽、というセクションにナラ・レオンは沢山あって驚いた。

全然、知らない曲ばかりで、タイトルもポルトガル語ばかりで、どのアルバムにしようか迷った挙げ句、このジャケットをすごく気に入ったのと、1曲だけ「Garota de Ipanema」というものに目がとまり、「あぁ、イパネマのなんとか、っていう曲ね、知ってる、知ってる」という訳で決定。


幾つかの有名な曲は耳にしたことがあったぐらいで、歌詞はもちろん(ポルトガル語がほとんどだし)全然知らなかった。
ライナー・ノーツも読まず、とにかく何度も何度も聞いてみた。

とても、ステキ。

ビブラートはなく、ただ自然に語るように、隣で話を聞いているような歌い方。
初めて聞くタイプの声、それはとっても好きな声だった。

彼女の声は、素直、という言葉よりも、正直、という言葉の方が近い表現のように思う。肩に力が入っていなくて、柔らかく、自然で、とてもエレガント。女性らしく、でも、か弱さなどは微塵も感じさせない。芯のしっかりした女性、という気がした。
あぁ、こういう声の人がいるんだ、と新鮮だった。


ナラは文学や芸術を愛するかなり裕福な家庭の次女として生まれ、12歳でギターを習い始める。15歳の頃には友達にリクエストされてパーティなどで歌ってはいたが、歌手になる気は全くなかったらしい。それだけで、よくこんなセンスと歌い方が身に付くものだなぁ。やっぱり天性のものなのね、と思っていたら、天性のものを持っているのも間違いないけれど、彼女の家のサロンには、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モラエス、という、ボサノヴァの三聖人とも言うべき人たちが訪れていた、というのだからすごい。
まさにボサノヴァの輪のまっただ中で青春期を過ごした人だったのだ。

一時はストレスに耐えられず、歌わなかった時期もあり、ボサノヴァと決別していた時期さえあったナラ。このアルバム「美しきボサノヴァのミューズ(詩女神)」は、軍事政権から逃れ、亡命中のパリで71年に録音された。
異邦人である彼女がパリで故郷を思い出し、何を想って歌うのか。
数あるボサノヴァ・アルバムの中でも、珠玉の一枚と言えると思う。


日曜日の朝には、このアルバム2曲目の「DESAFINADO」が聞きたくなります。
自分の中の、心の波が、ちょっといい感じの時に聞くと、
それはそれは言葉には表現できないぐらい幸せな気分になります。
ま、もちろん、これは私の場合。
ちなみにこの曲「デサフィナード」の直訳は、なんと「音痴」。

"愛しい人、あなたに調子はずれと言われると、私はとても苦しくなるわ
あなたみたいに耳がいいのは天才だけ
私の耳は粗末なものなんです
でも、私の愛のことだけは、そんな風に言わないで
こんな調子はずれの胸の奥でも
ちゃんとあなたへの想いが黙ってときめいているんですから
これがボサノヴァです、これがとても自然なんです・・"


なんかかわいくて、どこかトンチンカンで、すごくお洒落な一曲。

机をトントンとたたきながらリズムを取ったり、口笛を吹きたくなったり。
ポルトガル語の歌詞を読みながら、しんみりとしてみたり。
全24曲。
とても素敵なボサノヴァを堪能できるアルバムなのです。




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by nh6610002 | 2004-01-05 12:20 | essay
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