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hirobenaoko BLOG
by nh6610002
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Ella Fitzgerald 「The Best of the Song Books」
エラ・フィッツジェラルド
(1917-1996)

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私が初めて買ったvocalのアルバム。
なぜエラを知ったのか、エラを最初に選んだのか、それは覚えていない。

彼女のベスト盤は、Verve(レコード会社の名前)から3枚出ている。このデザインと同じで、ジャケットの色は、黄・ピンク・青の3色。私が初めて買ったのは黄色だった。
「とにかく初めはベスト盤を買ってみよう」と思ったんだと思う。そして、たっくさん曲が入ってる。16曲。なんだかジャケットもすごくいい。コミカルな、今にも動き出しそうな、歌が聞こえてきそうなエラのイラストが気に入った。

エラは言うまでもなく、ジャズ史上、最もすばらしいボーカリストの1人であり、いつまでも彼女の作品は、間違いなく受け継がれていくもの。

"the coolest music lady ever"
彼女の賛辞の言葉は、いくらでも聞くことが出来る。


このアルバムを聞き始めたときにまず思ったこと。
「こういうの!こういうのを自分の部屋で聞いてみたかった!」

それはまさに私がイメージしていたジャズだったから。なんとも言えず大人の雰囲気がたっぷりで、なんとも言えず温かいものだった。

エラの声は、底抜けに明るい、包み込むように優しい、茶目っ気たっぷりの少女のようにかわいらしい、生きるエネルギーに満ちあふれている、ゆったりと安心させてくれる、そんな、素敵な素敵な、素敵な声。

いま、これを書きながらしばらくぶりにこのアルバムを聴いている。
そうそう、この3曲目の"Bewitched, Bothered, and Bewildered"
これで、もう、オーディオの前で完全にしびれてしまったなぁ。
このイントロのピアノの音は一体ナニ?
歌詞を聞いているような、こんな語るような音は聞いたことがなかった。そのあとのエラの声を決してじゃまをせず、それでいてしっかりと彼女をサポートするような、このかけ合いに、しびれきってしまった。ベース、ドラムを聴く余裕はその頃の私にはなかったけど、聴けば聴くほど、その自然な、音の絡み合い方に唸らずにはいられない。

そう、憧れていた世界って、こういうものだった!と、自分の部屋で胸が高鳴ったのを覚えている。楽しい曲、元気が出る曲、切ない曲、ブルージーな曲、渋い曲・・。エラの絶頂期の素晴らしい曲ばかり集めた傑作だったのだ。


それにしても試聴なしに、なぜこんなにどんどん素晴らしいアルバムを見つけることが出来たんだろう。いま思えば不思議・・。立て続けに素晴らしいアルバムばかりに出逢ってジャズに惹かれないわけがない。

"I never knew how good our songs were until I heard Ella Fitzgerald sing them," こう言ったのはかの有名な作曲家であり作詞家であるガーシュイン兄弟。
エラが歌うと風景が浮かんでくる。
少し曇った昼下がりに、柳が揺れる川沿いをゆっくり歩いている自分を想像してみたり。私、ちょっとオカシイかも、と思うのも束の間、色々なことを思い浮かべずにはいられない。


そう、この7番目の"Miss Otis Regrets"
歌詞の意味は分からなかった。でも、気がつくと涙が溢れていた。

そして、" 's wonderful"の軽快なリズムが始まる・・
こんなアルバムを聴くことが出来る幸せ。

最高の時間。



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# by nh6610002 | 2004-01-05 14:03 | essay
Ann Burton 「BLUE BURTON」
アン・バートン
(1933-1989)
Ann Burton 「BLUE BURTON」_c0060479_15494652.jpg





オランダ人ジャズ・ボーカリスト。彼女のアルバムの中で1番初めに出逢ったのがこの「ブルー・バートン」。1曲目に入っている「捧ぐるは愛のみ」が大好きなTさんから教えてもらった。カウンターの一番端に座って聴かせてもらったその翌日、すぐに買いに行った。

好きなボーカリストは沢山いるが、もし3人選ばなくてはいけないとしたら、
やはりアン・バートンは挙げたい。
色々なタイプのボーカリストがいる中、彼女の個性は際立っている。
アルバムを聴き終えた時には、歌を聴いたと言うよりも、
大人の女性の美しい、ちょっと気だるい、詩の朗読を聞いたような感じがする。
彼女ほど「語る」歌は、ちょっと他にない。
彼女独自の解釈と「私は、私で、これでいいのよ」という投げやりな感じさえする歌い方がたまらない。こんな味わい深い歌を背伸びをせず、さらっと、でも、しっとりと歌うことが出来る女性になれたら・・、と憧れた。

1.I can't give you anything but love 2.Go away little boy 3.He was too good to me 4.But not for me 5.It's easy to remember  6.You've changed 7.The good life 8.In the wee small hours of the morning 9.Sunny


そして Louis van Dyke Trio の演奏が素晴らしい。ルイ・バン・ダイクという人はこのアルバムで初めて知った。
1曲目の「捧ぐるは愛のみ」、今では大好きなこの曲、このアルバムを聴くまで実はあまり好きではなかった。
アン・バートンの歌も渋いが、歌の合間に入るルイ・バン・ダイクのピアノにまたしびれる。
こんな雰囲気になる曲だったんだ・・、と何度も何度も繰り返して聴いた。

このアルバムを手に入れて暫く、あまりにも気に入りすぎて「これは誰にも教えない」などと、いま思えばなんともセコイことを思ったりもした。そんなまでもなく有名なのに。
気に入った場所をちょっと人に言いたくないような、ひっそりと1人で時間を過ごす所にとっておきたいような、そんな感覚だった。

・・まぁ、その場所も有名だったりするんだけど。

それにしてもこのアルバム。1965年の録音なんて驚く。いま聞いても、まったく古さはない。
もっと古い録音の素晴らしいアルバムも数え切れないほどあるけど、
あらためて、「いいものは、いつの時代にもいいんだなぁ」と、しみじみ思う。
今も昔も、人間の基本的な感情は、何も変わっていない。
そんなことを確信するとき、ホッとする。嬉しくなる。


「Blue Burton」。どの曲もすばらしい。一番最後のSunny まで。
他のアルバムもステキだけれど、特に気に入っている彼女の1枚。
いつまでもそばに置いておきたい。



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# by nh6610002 | 2004-01-05 13:08 | essay
Nara Leao 「Dez Anos Depois」
ナラ・レオン
(1942-1989)
Nara Leao 「Dez Anos Depois」_c0060479_15435089.jpg






邦題「美しきボサノヴァのミューズ」の名の通り、本当に美しいアルバム。
ブラジル音楽のボサ・ノヴァ。このなんとも美しくて切ないメロディーとこのリズムは、何故、日本人の私にもこんなに自然にしみ込んでくるんだろう。
それはもう、考え込んでしまうほどに。

このアルバムを買った頃、ボサノヴァって、なんだか気持ちのいいアノ音楽よね、ぐらいにしか思っていなかった。ギターのY氏に教えてもらった。
「ナラ・レオンって聞いてみたら?いいよ。」
さっそく、CD屋へ。
これまた、ブラジル音楽、というセクションにナラ・レオンは沢山あって驚いた。

全然、知らない曲ばかりで、タイトルもポルトガル語ばかりで、どのアルバムにしようか迷った挙げ句、このジャケットをすごく気に入ったのと、1曲だけ「Garota de Ipanema」というものに目がとまり、「あぁ、イパネマのなんとか、っていう曲ね、知ってる、知ってる」という訳で決定。


幾つかの有名な曲は耳にしたことがあったぐらいで、歌詞はもちろん(ポルトガル語がほとんどだし)全然知らなかった。
ライナー・ノーツも読まず、とにかく何度も何度も聞いてみた。

とても、ステキ。

ビブラートはなく、ただ自然に語るように、隣で話を聞いているような歌い方。
初めて聞くタイプの声、それはとっても好きな声だった。

彼女の声は、素直、という言葉よりも、正直、という言葉の方が近い表現のように思う。肩に力が入っていなくて、柔らかく、自然で、とてもエレガント。女性らしく、でも、か弱さなどは微塵も感じさせない。芯のしっかりした女性、という気がした。
あぁ、こういう声の人がいるんだ、と新鮮だった。


ナラは文学や芸術を愛するかなり裕福な家庭の次女として生まれ、12歳でギターを習い始める。15歳の頃には友達にリクエストされてパーティなどで歌ってはいたが、歌手になる気は全くなかったらしい。それだけで、よくこんなセンスと歌い方が身に付くものだなぁ。やっぱり天性のものなのね、と思っていたら、天性のものを持っているのも間違いないけれど、彼女の家のサロンには、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モラエス、という、ボサノヴァの三聖人とも言うべき人たちが訪れていた、というのだからすごい。
まさにボサノヴァの輪のまっただ中で青春期を過ごした人だったのだ。

一時はストレスに耐えられず、歌わなかった時期もあり、ボサノヴァと決別していた時期さえあったナラ。このアルバム「美しきボサノヴァのミューズ(詩女神)」は、軍事政権から逃れ、亡命中のパリで71年に録音された。
異邦人である彼女がパリで故郷を思い出し、何を想って歌うのか。
数あるボサノヴァ・アルバムの中でも、珠玉の一枚と言えると思う。


日曜日の朝には、このアルバム2曲目の「DESAFINADO」が聞きたくなります。
自分の中の、心の波が、ちょっといい感じの時に聞くと、
それはそれは言葉には表現できないぐらい幸せな気分になります。
ま、もちろん、これは私の場合。
ちなみにこの曲「デサフィナード」の直訳は、なんと「音痴」。

"愛しい人、あなたに調子はずれと言われると、私はとても苦しくなるわ
あなたみたいに耳がいいのは天才だけ
私の耳は粗末なものなんです
でも、私の愛のことだけは、そんな風に言わないで
こんな調子はずれの胸の奥でも
ちゃんとあなたへの想いが黙ってときめいているんですから
これがボサノヴァです、これがとても自然なんです・・"


なんかかわいくて、どこかトンチンカンで、すごくお洒落な一曲。

机をトントンとたたきながらリズムを取ったり、口笛を吹きたくなったり。
ポルトガル語の歌詞を読みながら、しんみりとしてみたり。
全24曲。
とても素敵なボサノヴァを堪能できるアルバムなのです。




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# by nh6610002 | 2004-01-05 12:20 | essay